はみげの一歩

2010年8月19日木曜日

「なによこれ。美佐代さん、あなた私を殺す気?」
「お母さん、どうかなさいましたか?」
「なによ、この味噌汁。しょっぱくて飲めやしないじゃない」
「え? 本当ですか? ちょっと味見してみます」
「ね? しょっぱいでしょ?」
「この、味噌汁・・・ 醤油味がしますねえ」
「だって、あんまり薄いから醤油足したんですもの」
「は? なんだって?」
「ちっとも味噌汁になってないから、お醤油かけたの! あなた、舌がどうかしてるのよ!」
「その前に、醤油かけたらしょっぱいに決まってんだろ、ババァ」
「あなた、今、ババァって言わなかった?」
「おめえ、自分で醤油ぶっかけてよ、しょっぱいの当たりめえじゃねえかよ。ボケちまったんじゃねえのか? ババァ」
「まあ! あなた、なんて事言うの?」
「醤油かけてしょっぱいの当たり前だろってのよ!」
「だって、あれは味噌汁なの? 全然味ないじゃない」
「じゃあ、お前作れよ」
「まあ! 弘一に言いつけますからね!」
「やれるもんなら、やってみろっての!」
「んまあ! それなら今すぐ電話します!」
「ええ、どうぞ、どうぞ。勝手に電話しろよ。ホラ! しろっての!」

「あの、すいません、大山田真行寺弘一をお願いします」

「どうした? あん? ババア」
「え? 仕事中って! アタシは今どういう・・ え? 帰ってからって何時に? 今すぐ帰れないの?」
「ったりめえじゃねえかよ、一々そんなくだらねえことで家に帰れっかっての! バーカ!」
「なによ! こんなウチ出ていきます!」
「待て、待て。味噌汁に醤油かけたくらいでカッカすんなって」
「あんな薄い味噌汁なんて飲めません!」
「醤油入れすぎた自分が悪いんだろ!」
「アタシは悪くありません!」
「じゃあ、今度からお前が作れよ!」
「アタシに向かって、お前ってなによ!」

「まあ、まあ、お二人さん。そうやって、喧嘩するんじゃないの」
「アンタ、誰?」
「いいえ、アタシはただの通りすがりの怪しい者です」
「怪しい」
「外にもビンビンに聞こえてます」
「ビンビンに聞こえていたとは!」
「ええ、ええ、そりゃ、もう、ギンギンに外まで聞こえてました。ええ」
「聞こえていても、勝手に人の家に入るな!」
「はい、その通りです、すいません、帰ります」
「わかればよろしい」
「じゃあ、また明日! ば〜い!」
「来るな!」