たてわれ小三郎

2010年7月13日火曜日

「お父さん」
「なんだい? 海晴。急にあらたまって」
「実は紹介したい人がいるの」
「・・・」
「どうかしたの?」
「いやあ・・・ お前もそんな年になったのかなあ・・・ と思って」
「今年で36よ?」
「ああ・・・」
「紹介したい人がいるの」
「ああ。わかった。それで、どういう人なの?」
「男の人よ」
「それくらいわかっているっての! どういう人なの?」
「人間」
「たしかに、牛と結婚するとか言ったら激怒してぶん殴るけども、あーた、フツーは相手は人間だとわかるもんでがんしょ? げしょ? げしょ? そうでがんしょ? げしょ?」
「そうね・・・」
「それで、いくつくらいの人なんだい?」
「一人」
「だから、複数人と結婚しますって言ったら、怒って稲妻拳法電撃チェストを叩きこむところだけども、フツー、フツーは相手は一人なんじゃないの?」
「お父さんは二人いなかったっけ?」
「違う。あっちは本気で、お前のお母さんが浮気」
「お父さん、こういう時に、娘に殴られたいの?」
「いいえ。冗談です」
「それならよろしい」
「それで、一人の男性の人間って事はわかったから、どういう人なんだい? 職業とか、性格とか、年齢とか」
「いくつだと思う?」
「は?」
「お父さんは、いくつだと思うの?」
「うーん・・・ 一人」
「親子ねえ・・・」
「そうだなあ・・・ って、そういう事じゃなしに、酒場で出会った女の「アタシいくつに見えるクイズコーナー」みたいなことはしないの」
「はい」
「それで、何歳くらいの人なの?」
「私より年下」
「年下で大丈夫なのかい? しっかりした人なの?」
「私、今年で36よ?」
「ああ。だから」
「しっかりしてる人よ」
「まあ、お前の方がしっかりしてないよな、たしかに」
「うるさいわね。目を突かれたいの?」
「いいえ」
「なら、よろしい」
「それで、どういう性格の人なの?」
「真面目な人」
「もう少し、具体的に言えないの?」
「だから・・・ コツコツタイプ?」
「こっちに聞かれても、俺は知らんぞ。会った事ないんだし」
「だから、コツコツタイプなんじゃないかなあ・・・」
「結構、貯金とか小金をため込んでそうなのかい?」
「お父さん、そういう見方しかできないの?」
「いや、ホレ、やっぱり、そういうのがちゃんとある人じゃないと心配でしょ?」
「そこそこあるそうよ」
「どうしてそこまで知ってるの?」
「いえ、彼のお父さんが社長さんで・・・」
「その人と結婚しなさい」
「は、ないのよ」
「は?」
「彼のお父さんは、社長さんではないのよ」
「なに?」
「ひとの話は最後まで聞く!」
「はい、よくわかりました」
「実は、外で待たせてあるの」
「それを早く言いなさい。こんなに待たせちゃまずいだろ」
「それはお父さんが、色々聞くから」
「いくつに見えるクイズはどうした?」
「あれは日頃の癖」
「それで今までモテなかったんだねえ」
「うるさいわねえ。じゃあ、呼んで来る」
「ああ」

「それでは紹介します! 近所の天才カラオケ少年の日暮喜三郎少年で〜す」
「な、なに?」
「毎朝4時に起きて、庭でカラオケで演歌を熱唱するから、近所で迷惑がられているのがたまに傷ですけども、この前ちびっこ演歌大会で8位入賞」
「フツーじゃんよ!」
「しかも、出場7名」
「計算合わないでしょ!」
「いえ、一人年齢詐称で失格なの。47歳の短パン姿の親父。しかも、審査終わってから気が付いた」
「バカじゃなかろうか?」
「なんかヒゲ面だから、変だなあ・・・ って思ったそうよ」
「そうか・・・」
「加齢臭と酒の臭いで気が付いた」
「それはいいとして、そういうのを紹介してどうするわけ? 未成年とは結婚できんぞ」
「こぶし、コロンコロン転がすんだから!」
「ひとの話を聞け!」
「もちろん、結婚しないわよ」
「結婚しないって・・・ どういう事なんだ?」
「また、来週!」
「は〜い」