たてわれ小三郎

2010年7月08日木曜日

「あ、これ懐かしいねえ・・・ 俺もよくこのぬいぐるみで遊んだんだよ」
「そうなの?」
「うん・・・ って、洗濯でもしたの?」
「そのぬいぐるみ?」
「なんか湿ってるよ?」
「うん、よくウチの犬が噛んで遊んでいるんだよ」
「なに、それを俺が手で触ってたってわけか?」
「そうだよ」
「で、この手をどうする」
「洗ってくればいいんじゃない?」
「この、バカァー!」

バシッ

「痛い・・・」
「痛いか?」
「そりゃ痛いよ」
「俺は、今、手よりも、心が痛い」
「犬が噛んでいるって先に言えばよかったよな、ごめん」
「ちがああああう!」
「ひっ・・・」
「日本男児が、犬ごときに噛み負けしてるってのに、そのままにしてるのがいかんのだ!」
「ええっ!」
「さあ! このぬいぐるみを噛め! 犬なんぞに負けるんじゃない!
「い、イヤだ!」
「噛め!」
「でったいに、イヤ!」
「どうしてもイヤか?」
「どうしてもイヤ」
「じゃあ、仕方ない。俺が噛むから、お前も噛め」
「や、やるねえ・・・ 男だねえ」
「おうよ。リリアン編ませれば右に出る者がいないくらいに、男の中の男だ」
「す、すげえ・・・」
「いいか? ぬいぐるみってのは、こうやって噛むんだ! 見てろ!」
「ああっ! 本当に噛んだ!」
「まずぅ〜」
「そりゃそうだ」