馬車にしないでよ
2009年9月10日木曜日
「お父さん、ちょっと食べてみて」
「おや? これは房乃が作ったのかい?」
「お母さんほどじゃないんだけど、ちょっと食べてみて」
「ああ。いいよ」
「うーん・・・」
「どうしたの? おいしい?」
「いや、おいしいよ、うん」
「ホント?」
「ちょっと塩分欲しいけど・・・ な」
「でしょ?」
「でしょって?」
「まだ作っている最中で、味見して欲しかったの」
「それなら、ちょっと塩を足した方がいいよ。うん」
「実は、ね・・・・」
「なに?」
「今度、お父さんのお誕生日じゃない?」
「そうだったっけ?」
「ホント? なんか最近ソワソワしてたから、ひょっとして・・・」
「やっぱりわかる?」
「そりゃわかるわよ、親子だもの」
「ああ・・・ わかるか・・・ 親子だもんなあ」
「それで・・・」
「それで、なんだい?」
「実は欲しいものがあるの」
「なんだい?」
「有り金全部」
「ヒッ・・・・・・・ そ、その包丁を戻しなさい」
「出せ」
「お、おい・・・ 冗談はよせよ・・・」
「こうやって包丁をすべらせれば、冗談かどうかわかるだろ?」
「い、痛い・・・ ちょっと切れてない?」
「さあ、出せ」
「はい、ぺろ〜ん」
「ナスの古漬けは出さなくてよろしい」
「はい、しまいます」