餅すすり75
2009年7月24日金曜日
「お爺ちゃん」
「なんじゃ?」
「それは、ちょっと無理じゃない?」
「無理なもんか」
「いや、75歳で餅すするってのは・・・」
「危険だと言うのか?」
「いや、夏に餅をすする、その理由がわかりません」
「いいだろ、わしの道楽だ」
「道楽・・・」
「それともなにか? 餅じゃなくて、チンコでもすするか?」
「ひ、ひぃいいい・・・」
「ちょっと言ってみただけだ」
「ふう・・・」
「それで、餅は?」
「それが、パック餅しかないんですよ」
「なに?」
「いや、レンジでチンして・・・」
「ポって出す」
「は?」
「レンジでチンしたら、ポッって出す」
「はあ・・・」
「ここ笑うところ」
「はあ・・・」
チン!
「あ、鳴った」
「いえ、あれは太郎の頭突き」
「頭突き?」
「そうなんですよ、昨日から空手の修行だって言って、そこいら中頭突きしまくってて・・・」
「太郎はいつからバカだったっけ?」
「それはお爺ちゃんが高い高いをやっている時にタンスの角に太郎の頭を・・・」
「あ・・・」
「そうですよ」
「そうだっけ?」
「そうですよ。それで病院でCTスキャンしたら、脳の一部が活動してなくて暗い」
「そ、それ以上は言わないで・・・」
「ええ」
チン
「今度はレンジか?」
「いえ、やっぱり頭突き」
「まだ太郎は頭突きしてるのか?」
「いいえ、アタシ」
「なんで目の前で! ああ! ああ! この母親は!」
「ここは、ネタ」
「ネタか!」
チン
「さあ、今度は餅だろ」
「あら、そうだわ・・・」
「じゃあ、早速用意してくれ」
「ええ」
「待ち遠しいなあ・・・」
「はい、お待ちどうさま」
「って、一個をすすってどうするわけ?」
「いや、餅」
「餅だけども、フツー餅すすりは一升くらいの餅を・・・」
「餅を顔に貼り付けて、熱い! と、言う?」
「どうして下の句がそうなるんだ?」
「いや、なんとなく」
「そうじゃないでしょ?」
「ええ・・・」
「こんな餅一個をすすってどうするわけ?」
「だって、お正月の残りの餅ってこれしかないのよ?」
「スーパーに売ってるだろ」
「そんなバカな事こっ恥ずかしくて買えないわよ」
「昨日、ローション・ペペとうすうすコンドーム買ってこなかったか?」
「どうして、それを・・・」
「家政婦は見た」
「家政婦だったのか!」
「いえ、実はお爺ちゃん」
「それは知ってるって」
「やっぱり?」
「そう簡単には騙されないのサ!」
「まあ、仕方ない。一個でもいいからすするか」
「そうしてください」
「ああ・・・」
「さあ、どうぞ」
「なんか、そのニヤリとした、なにかを期待しているかのような目はなんだ?」
「それは気のせい」
「そうか・・・」
「さあ、召し上がれ」
「うーん・・・ ちょっと熱いなあ・・・」
「もう少し冷ましましょう」
「ふーっ、ふーっ」
「ヤダ、お爺ちゃんったら。んもう。そんな事しても、アタシのスカートはめくれませんよ〜だ」
「頭突きのしすぎで壊れたか?」
「は?」
「餅を冷ましているの! ふーふーして!」
「あら、そうなの・・・」
「なにを考えているのやら」
「まだまだ女ですもの」
「まあ、そういう事にしておこう」
「はい」
「ふー、ふー」
「もういいんじゃないかしら?」
「いいかな・・・」
「さあ」
「ああ」
ズズーッ
「って、なんか手ごたえないなあ・・・」
「一個ですからねえ・・・」
「もう終わっちゃった」
「ねえ・・・」
「もう本当にないの?」
「頭突きでもします?」
「なんで!」