あんぽんたんぽんすかぽんたん

2009年10月22日木曜日

「なんだよ、こりゃ、お歳暮にカビが生えたもん送ってきやがって」
「あら、これって生ハムの大きいのじゃない?」
「なんだ? そりゃ」
「これ高いのよ?」
「そうなの?」
「高いわよ、これ。作るの大変なんだから、生ハム」
「へえ・・・ で、美味しいの?」
「美味しいわよ」
「じゃあ、ちょっと食ってみるか」
「そうね」


「って、これ、本当に生ハムなの?」
「これは、生ハムじゃなくて、単にカビの生えた肉ね」
「そうか・・・」
「そうなんじゃないの?」
「これって、怒るところなのか?」
「さあ・・・ こういう食べ物かもしれないし・・・」
「こういう食べ物がないとも言えないしなあ・・・」
「カビ生えてるけどねえ・・・」
「カビ生えてるけどなあ・・・」
「それで、あなた、これ、どうしよう?」
「せっかくもらったものだし、捨てるのももったいないし・・・」
「どう使っていいか、料理していいか・・・」
「犬のズッケロに食べさせようか」
「それはいいわね。ズッケロ、おいで」
「わん、わん」
「よし、よし、よし」
「くぅ〜ん」
「さあ、お食べ」
「むしゃむしゃむしゃ」
「なんか食べてるねえ。美味しいかもしれないなあ、犬には」
「犬には、ね」
「やっぱり、犬にも一度では食べられないみたいね」
「ズッケロ、もういいから、あっち行ってなさい」
「わん」

「じゃあ、残りは明日だな」
「そうね」
「ところで、お礼状にどう書いていいんだろ?」
「さあ・・・」

ピンポーン

「ただいま〜」
「あら、お帰り」
「大変だよ、お父さん」
「どうした? 鶴丸」
「大変。玄関でズッケロがクチから泡吹いて死んでるよ?」
「ええっ・・・」
「なんか二人して顔が青ざめているけども、そんなに悲しいの?」
「ちょっと待て。トイレ行って吐いて来る」
「いえ、それよりも、病院に行って、胃洗浄」
「そうか、じゃあ、そうしよう」
「胃洗浄って、二人して、どうかしたの?」
「お歳暮にカビの生えた肉が送られてきて、生ハムかと思って食べたら、美味しくないから、ズッケロに食べさせたのよ」
「あら・・・」
「これから病院に行って来る」
「でも、ズッケロの死因はガラガラヘビに噛まれたからだよ?」
「日本におるけ! あんだら」
「実は、ここに入ってるんですねえ」
「ああっ! 犯人はお前だったのか!」
「はい」
「でも、やっぱり吐く。げえ・・・」
「全身に浴びました」
「ううっ・・・」