烏賊汁兄弟

2008年10月10日金曜日

「うちのおじいちゃんすげえんだぜ?」
「どうすごいの?」
「80歳で頭突きで瓦を割るんだ」
「すごいねえ」
「ああ。命がけ」
「すげえ」
「ねえ! おじいちゃん、そうでしょ?」
「いや、わしゃやらんぞ」
「(お友達の前で言っちゃったんだから、やってくれないと困るよ)」
「(そんな事言ったって、やったことないぞ、おじいちゃんは)」
「(お母さんに、エロ本隠している事言い付けるから)」
「(持って無いぞ、わしゃ)」
「(うそだ。あの写真はなに?)」
「(あれは、シンタのお母さんの写真)」
「(うげぇ、そして、隠し撮りかい!)」
「(それはウソ)」
「(っていうか、どっちみち言う)」
「(わかった、やる)」
「二人でなにを話ているの?」
「いや、打ち合わせね」
「お母さんの写真の?」
「いや、瓦割りの」
「そう、そうじゃ。瓦じゃ」
「すげえ!」
「だろ? じゃあ、おじいちゃん、やってみて」
「よし」
カチャ
「ちょっと待った」
「なに?」
「黒帯の達人が一枚はないでしょ」
「お前、わしを殺す気か?」
「さっき、達人って・・・」
「(おじいちゃん・・・)」
「(なに?)」
「(やってよ!)」
「(やるけども)」
「じゃあ、かる〜く15枚」
「ひっ・・・」
「いま、”ひっ”って・・・」
「いや、呼吸法」
「すげえ!」
「すげえだろ? これから割るから。ねえ? おじいちゃん?」
「あ、ああ・・・」
「って、どうして十字を切っているの?」
「わしゃクリスチャン」
「うそつけ」
「はい」
「ねえ? やってよ!」
「やって!」
「はぁ〜」
「あ、気合入れている」
「うん」
「はぁ〜」
「・・・」
「・・・」
「ふぅ」
「いや、そこで気合抜かない」
「はい」
「今のは?」
「いや、なんでもない。さあ、おじいちゃん」
「はぁ〜」
「お、気合だ」
「うん」
「はぁ〜」
「・・・」
「・・・」
「はぁ〜」
「・・・」
「・・・」



「あれ? 今、鈍い音が・・・」
「あ! おじいちゃんの額が割れてる・・・」
「ううっ・・・」
「お、おじいちゃん、大丈夫?」
「心配するなら、こんな事させるな」
「はい」