2006
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2006年10月29日日曜日
「いらっしゃいませ。カリスマラーメン店です」
「じ、自分で言うのか・・・」
「なんになさいますか?」
「って、メニューにはラーメンしか書いてませんよ?」
「甘い!」
バシャ!
「な、なにするんだ! いきなり水かけやがって!」
「あんたはラーメン通じゃない。今すぐ帰ってくれ!」
「な、なにぃ?」
「なんでもありません・・・」
「(いきなり弱いなあ・・・)」
「なんになさいますか?」
「あ、わかった・・・ 隠れメニューとかあるんでしょ?」
「え? よくわかりましたねえ」
「なにがあるの?」
「お答えできません」
「なんだよ! そりゃ」
「教えたら隠れメニューにならないでしょ」
「まあ、そうだけども・・・」
「なんにしようかな・・・」
「なんになさいます?」
「じゃあ、ここに書いてある、ラーメンちょうだい」
「ノーひねりで、実にそのままですねえ」
「しょうがないでしょ! 隠れメニューわかんないし」
「じゃあ、ラーメンですね?」
「ああ。ラーメンね」
「おいくつ?」
「ひとつだよ! ひとつ! 見てわかんないの?」
「いや、なかには二人前頼む人もいるもんですし・・・」
「俺は、頼まない。ラーメンひとつ」
「じゃあ、ラーメンひとつですね。はい」
「いやに早いねえ」
「ええ。作り置きですから」
「ラーメンでそれをやるか!」
「甘い! バシャ!」
「だから! 水をかけんじゃねえっての!」
「あら、ごめんあそばせ。お許したもれ」
「まったく、なにしやがんだろか、こいつは」
「いや、ラーメン通なら、作りたてのラーメンって言うもんですから、ついカーッとなって」
「すさまじい店だな、そりゃ」
「それじゃ、ラーメンの作りたてをおひとつですね?」
「ああ」
「ラーメン作りたて追加!」
「って、待て。なんだよ、その追加ってのは」
「いや、つくらなきゃなんないでしょ。店の奥の方にね」
「そういう問題じゃないだろ。さっきのはキャンセルだよ! キャンセル!」
「(まったく、なんてタチの悪い客だ)」
ブツブツ・・・
「おい、今なんか言ったか?」
「いいえ、なんでもないですよ」
「まだできないの?」
「やっぱり、さっきの食べます?」
「そういう問題じゃないっての! できるの遅いなってこと!」
「あ、あま・・・」
「その、今にも水をかけようというポーズはなんなの?」
「いや、ラーメン通じゃないなってことで・・・ 店長から言われているもんですから」
「おい、店長出せ」
「はい」
「だから、店長を出せってんだよ!」
「いや、あたしが店長」
「なんだ? そりゃ。店長はあんたかよ。じゃあ、誰が作っているんだ?」
「さあ」
「・・・」