愛のもじゃもじゃ

2002年08月0日木曜日

「へい、いらしゃい」
「屁はいらない。寿司をくれ」
「いや、お客さん、そういうことじゃないんですけど」
「とりあえず、ビール」
「はい、ビール一丁」
「ぷはあ。やっぱり、シャバで飲むビールはうまいなあ…」
「も、もしかして、お客さん…
刑務所から出て来られたばかりなんですか?」
「おうよ。ちょいとばかし、別荘の方にな」
「どちらの?」
「軽井沢」
「いや、お客さん、ベタなネタは…」
」「とりあえず、カッパ」
「へい! カッパ」
「なんでえこの野郎! 誰がカッパだ!」
「いや、お客さんのことじゃないんですよ…」
「ったく、気にしてんだから、気ぃ使えよな」
「ホントにすいません>それで、なににします?」
「え? カッパ」
「いや… お願いですから、なんか他のものにできません?」
「カッパ」
「ひっ! そ、それじゃ、カッパですね?」
「誰がカッパだ? この野郎」
「アタシはどうすりゃいいんです?」
「ああ、いいから、早く握れよ」
「はい」
「だから! 俺のサオ握ってどうするんだ? あん?」
「いや、目を見つめて"握れ"っていうもんですから、つい…」
「馬鹿野郎! そんなのは、ムショで済ました」
「逆にコワイなそりゃ…」
「へい! お待ち! カッパ一丁」
「馬鹿野郎! 誰がカッパだ!」
「ほんと、やりにくいなあ…」
「ああ、やっぱ、シャバで食う寿司はうまいもんだなあ…」
「ところで、お客さん、どうしてそんなところに入られたんです?」
「食い逃げ。それもあんみつ」
「おい、おい」
「なんだと?」
「いえ、いえ、なんでもないですよ」
「よし、それならいい。
そんじゃ、お勘定」
「え? もう帰るんですか?」
「ひさしぶりだったから、すぐに酔っちゃってな」
「はい、790円です」
「ここアメックス使える?」
「いや、うちはやってないんですけど」
「あ、それじゃツケといて」
「はい」
「って! そこでケツ出してどうする。それはツケじゃなくて、つーけだろ」
「あ、べたなネタをしてしまった」
「だから、ツケにしておいてね」
「いや、お客さん、はじめてでしょ?」
「いや、前に来たことある」
「え! そうだったのですか! はい、どうぞ」
「実にものわかりのいい店だな…
また来るよ!」
「それはやめて」